XYLDで配当金生活を考えるのは危険!分配金とリスクについて解説

こんにちは、みたお(@mitao_kabu99)です。

分配金(インカムゲイン)を目的とした投資でETFを利用している人は、QYLDというETFを聞いたことあるかもしれません。QYLDは高い分配利回りが人気のETFです。この記事ではQYLDと親戚のような「XYLD(グローバルX S&P 500・カバード・コール ETF)」というETFを紹介します。

XYLDは、S&P500のカバードコールETFとして安定的な収益を提供できるのが魅力的なETFです。ただし、オプションを利用したETFなので、仕組みを理解しておかないと自分が予想していた投資結果にならないかもしれません。

この記事ではXYLDの特徴やリスクが高い部分についても詳しく探っていきます。投資初心者の方にはあまりおすすめしませんので、参考にしてください。

XYLDの特徴
XYLDの特徴

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目次

XYLDとは?どんなETFなのか

XYLDはS&P500指数とオプションを利用したETFです。S&P500指数の株式を購入して、同一指数のコールオプションを売ります。これはカバードコール戦略と呼ばれる方法で、S&P500の株価の上昇ではなく、オプションのプレミアム(リスクに応じた手数料みたいなもの)によって利益を出す投資戦略です。

XYLDの基本情報

XYLDの基本情報は以下の通りです。

基準価額(米ドル)40.72 (2023/04/20)
純資産総額(百万米ドル)2,515.99 (2023/03/31)
分配金回数/年12回
分配利回り5.81%
経費率0.60 %
設定日2013/06/24
運用会社グローバルX
XYLDのETF情報(2023/4/25時点)

経費率は0.60%なので、VOO(経費率:0.03%)のような知名度がある米国ETFよりもかなり高めとなっています。

上の表はSBI証券のETF情報を利用していますが分配利回りが5%台になっている理由はわかりません。グローバルX社のデータでは10%を超えています。分配金情報は下で詳細を記載しています。

純資産額はこの2~3年で急速に増えていることがわかります。

XYLD 銘柄紹介資料
XYLD 銘柄紹介資料

XYLDの株価チャートとトータルリターン

XYLDの株価と分配金を含めたパフォーマンスを見てみます。S&P500と比較してみました。

XYLDのリアルタイムチャート

以下はXYLDのチャートです。期間ごとに株価の上下はありますが、全体としてはこの10年でほとんど上昇はありません。これはカバードコール戦略の特性が関係しています。

対象指数であるS&P500と比較してみます。特に2020年のコロナショック後から2021年末ごろまでの動きはS&P500とXYLDの特徴をよく表しています。

このあと説明しますが、XYLDは株価の上昇がほとんど期待できないETFです。そのため、2020年はS&P500と同様に下落はしていますが、その後の上げ幅が限定的となっています。

これはXYLDが悪いということではなく、XYLDのカバードコール戦略はこのような前提であるということを理解しておかなくてはいけないということです。

XYLDとS&P500の株価チャート
XYLDとS&P500の株価チャート

トータルリターン

カバードコール戦略の特性上、下落相場では同様に下落しつつもプレミアム分は損失が限定的になります。2022年は全体として下落が続きましたが、その局面ではXYLDのほうがリターンは良くなります。どちらもマイナスですがオレンジにXYLDの線が上にあることがわかります。

XYLDとS&P500トータルリターン比較(2022年)
トータルリターン(2022年)

もう少し期間を延ばして、2020年以降で見てみます。2020年から保持したと仮定すると、2022年の下落を加味してもS&P500のほうがトータルリターンで上回ります。分配利回りが高いとしてもそれ以上にキャピタルゲインが上昇すれば、そのリターンにはかなわないということを意味しています。

トータルリターン(2020年以降)
トータルリターン(2020年以降)

構成銘柄とセクター比率

構成銘柄はS&P500とほとんど同じですが、そこはあまり意味がありません。

組入れ構成上位(2023/4/26時点)
組入れ構成上位(2023/4/26時点)
セクター構成
セクター構成

XYLDが特徴的なのは下の図で囲んでいるオプション部分です。毎月19日ごろに入れ替えを行っているようです。2023年5月19日で4120ポイントのコールの売りを出しているということのはずです。4月19日のS&P500がだいたい4120ポイントなのでアットザマネー(原資産価格と権利行使価格が同じ)のオプションの動き通りです。

全保有銘柄の一部

XYLDの配当日はいつ?2023年の権利落ち日一覧

XYLDの2023年の権利落ち日は以下のようになっています。スポットで購入するよりも定期購入している人のほうが多いかもしれませんが、権利落ち日前営業日までに購入するようにしましょう。

権利落ち日支払予定日分配金
1/231/31$0.410100
2/213/1$0.408121
3/203/28$0.398923
4/245/2$0.375960
5/225/31$0.284000
6/206/28
7/248/1
8/218/29
9/189/26
10/2310/31
11/2011/29
12/282024/1/8
2023年権利落ち日一覧(実績は2023/5/24時点)

XYLDの分配金実績と配当利回り

XYLDの過去の分配実績と増配率は以下の通りです。増配率は分配金平均で計算しています。かなり分配金がぶれやすいETFです。

上で記載している通り、2023年5月の分配利回りが0.284ドルとなり、この水準は2020年7月以来の低さとなっています。今後はこの1~2年ほどの分配利回りが期待できなくなってくるかもしれません。

分配金合計分配金平均増配率(前年比)
2023年1.5931040.398276▲9.64%
2022年5.2889170.44074315.39%
2021年4.5835020.38195924.53%
2020年3.6805790.30671526.18%
2019年2.9170.243083▲7.53%
2018年3.1544860.26287416.68%
2017年2.703570.225298
分配実績

XYLDの月次の分配は「獲得したオプション・プレミアムの半分」か「NAV(純資産額)の1%」のいずれか低い方に上限を設定しています。下で言うと2020年の後半や2022年以降あたりはNAVの1%パターンということだと思います。現在の分配金平均がだいたい0.4ドル/月くらいなので最低限それくらいが続きそうだと思います。

おおよそですが、基準価額=純資産額÷口数なので、口数で考えれば基準価額の1%が月分配金(NAVの1%)と同じくらいと考えて良さそうです。ただしこれは上限なので今後はわかりません。

プレミアムと分配金
プレミアムと分配金

XYLDはタコ足分配なのか?

上の通り、プレミアムの半分もしくはNAV(純資産額)の1%のいずれか低いほうが上限となっているので、基本的にはタコ足ではなくプレミアムから分配金が支払われていることになります。

ただし、運用成績にかかわらず一定以上の分配金がでているので、結果的にはタコ足になっていることもありそうです。実際にXYLDのfactsheetには以下の文章が記載されています。

分配金の一部は、資本の返還を含む場合があります。

XYLD-factsheet

以下はXYLDの運用報告書に記載されている財務ハイライトです。期首純資産額に青で囲っている「運用による合計」「分配による合計」(カッコはマイナス)を足した結果が期末純資産となります。

そのため、例えば2020年は運用がマイナス(▲3.61)になっており、分配(▲3.33)もしているので大きく純資産が落ち込んでいますし、運用がプラス(+2.50)になっていてもそれ以上に分配(▲4.04)している2018年もトータルとしては純資産が減少しています。この年のオプションプレミアムの詳細はわかりませんが、結果的にはタコ足に近い運用となっています。

出典:運用報告書(全体版)
出典:運用報告書(全体版)

XYLDの仕組みを解説 カバードコール戦略の特徴とリスク

XYLDはコールの売り(ショート・コール)を利用した商品です。それほど難しい仕組みではありませんが、興味がなければここは飛ばしてもらっても構いません。ショート・コールの最大の利益はオプション・プレミアム分まで(原則としてS&P500が上昇してもXYLDは上昇しない)で、下落時には損失が発生するということは覚えておいてください。

XYLDの投資方針

XYLDの銘柄紹介では以下の4点がポイントとしてあげられています。

XYLDのポイント
  1. S&P 500指数を対象にするカバード・コール戦略でオプション・プレミアム獲得を目標
  2. 投資対象は「S&P500指数の構成銘柄」と 「S&P500指数の対応する1か月物アット・ザ・マネーのコール・オプション」の売却
  3. カバード・コール戦略で獲得したオプション・プレミアムにより、定期的なインカムを提供
  4. S&P 500指数のスケジュールに合わせ、毎年9月に再構築、四半期毎のリバランスを実施。コール・オプションの更新は毎月実施

3.は上で説明した通り、プレミアムの半分かNAVの1%の低いほうを上限に分配しています。4.はこの通りでリバランスとコールオプションの更新(多分19日付近)を定期的に行っているようです。

それでは、XYLDの要になるカバードコールとはどういうものかを理解しましょう。

カバードコール戦略とは?

カバードコール戦略の概要
  • 原資産を保有しつつ、コールオプションを売る戦略
  • コールオプションの売りの最大利益はプレミアム分のみ
  • プレミアムは安定的に得られるため、分配に利用される

カバードコールというのはオプション取引の1つであるコールの売りを利用した投資戦略です。

基本的なオプション取引は「コールの買い」「コールの売り」「プットの買い」「プットの売り」の4種類なので簡単にその内容が知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

細かい話になりますが、XYLDは原資産価格(市場価格)と権利行使価格が等しいアットザマネー(ATM)という方法を利用しています。オプションプレミアムを獲得しやすくする代わりにS&P500の株価上昇利益は完全に放棄する戦略です。詳しくは次で説明します。

コールオプションの仕組みとXYLDの損益分岐点

XYLDの仕組みはそれほど難しくありませんが、詳しく知りたくない人はここは飛ばしてもらっても構いません。

まず、コールオプションは具体的には以下のようなイメージです。

Aさん

この株を株価1000円で買う権利を売ります。
株価が1200円になっても1000円で売りますよ。
その代わりこの権利は50円するので、1050円で買えますよ。

Bさん

株価が上がりそうだし1050円なら買おうかな

このAさんの投資戦略がコールオプションの売りです。この権利の50円がプレミアムと呼ばれている部分です。

考えられるケース
  1. 価格が上昇するケース
    購入価格を実際の株価が上回るため、権利行使価格と上昇した価格の差分だけBさんは得をします。
    Aさんは50円分のプレミアムを得ることができます。(それ以上の株価上昇は放棄することになる)
  2. 横ばいのケース
    オプションの権利をBさんが行使しなければ、50円のプレミアム分がそのままAさんの利益となります。
    Bさんは50円分のプレミアムだけ損をします。
  3. 価格が下落するケース
    Bさんは権利を行使しません。Bさんは50円のプレミアムだけ損をします。
    Aさんは保有している資産の株価が下がるので、損をします。ただし、50円のプレミアムは得ることができているため、損失が少し減ります。

一般的にコールオプションの売りの損益図は利益は限定的(プレミアム分)で損失は無限大となります。しかし、カバードコールの場合、原資産を保有している状態なので、上記の損益を図にすると下図のようなイメージになります。

損益分岐点は権利行使価格+プレミアム分です。下の図は権利行使価格1000(縦軸と横軸の交点)、プレミアムは50としています。緑の点線と横軸の交点が損益分岐点で、横線よりも下にいくと損益分岐点を下回ります。(原資産を保有しているため、損失ではなく利益の放棄となるイメージです)

原資産の価格が下落した場合、オレンジ線が横線を下回る部分では損失が発生します。(ただし、プレミアム分だけ損失が軽減されます)

カバードコール戦略の損益図
カバードコール戦略の損益図

この図ではXYLD手法である権利行使価格=原資産価格(アットザマネー)をイメージしています。

XYLDとQYLDのどっちを選ぶべき?2つの違いを比較

QYLDはXYLDと似ているETFで同じくグローバルX社の商品です。

構成銘柄の違い

QYLDはナスダック100指数と連動していまが、XYLDはS&P500指数に連動しています。とはいえ、カバレッジ100%で運用しようとしているので、株価上昇時に関してはS&P500でもナスダック100に連動していてもそれほど変わりません。

パフォーマンスの違い

過去5年の株価チャートを見るとQYLD(青線)のほうが下落率が大きくなっています。ただし、2020年のコロナショックはQYLDよりもXYLD(赤線)のほうが大きく下落しているので、一概にどちらが大きく下落するとは言えないかもしれません。どちらにしても下落はすれど上昇は限定的という特性に違いはありません。

XYLDとQYLDの株価チャート
XYLDとQYLDの株価チャート

対象のインデックスであるS&P500(SPX:赤線)とナスダック100(NDX:青線)を比較してみます。こちらは明らかにナスダック100のほうが変動幅(ボラティリティ)が大きいので上の関係とは逆になっています。

S&P500とナスダック100の株価チャート
S&P500とナスダック100の株価チャート

分配金を含めたトータルリターンを比較すると以下の表のような結果となります。下表は各年1月1日から保有を始めた場合のリターンが示されています。株価の上昇はあまり期待できないため、大きなリターンは見込めませんが予想よりも安定したリターンとなっています。XYLDとQYLDと比較すると、やはりQYLDのほうが早く市場の動きに反応しているようです。

スクロールできます
種類2019年2020年2021年2022年2023年
XYLD31.48%7.92%11.67%▲7.53%5.58%
QYLD31.96%7.06%▲0.53%▲10.74%11.14%
S&P50074.68%33.02%14.03%▲13.26%7.02%
トータルリターン比較

XYLDの長期保有は危ないのか?

個人的な意見としては、XYLDを長期で保有するのはおすすめできないと考えています。

カバードコール戦略の危険性

カバードコール戦略は仕組み上どちらかに株価が大きく動くよりも、ボックス圏内で動くときに有効に働く戦略です。先に説明した通り、原資産の価格が権利行使価格+プレミアム分を超えると、権利が行使されるため、上値に制限がかかります。下落は起こりやすく、上昇が制限されるのはそのためです。

これはカバードコール戦略が危険ということではなく、カバードコールがそういう性質だと理解しておく必要があります。S&P500やナスダック100など、キャピタルゲインを追求する指数に関しては、そちらを狙う方が望ましいと感じます。

また、カバードコール戦略ではオプションプレミアムを得ることが重要ですが、プレミアムは様々な要因により上下します。一般的には以下のような動きをするといわれています。

コールの売りは原資産の価格(XYLDではS&P500の価格)が上昇したときに、それ以下の価格で購入できる権利を売ることです。したがって、原資産価格が下落する可能性が高ければプレミアムは減少します。また、短期金利の下落もプレミアムの下落につながります。

要因コールオプションのプレミアムプットオプションのプレミアム
原資産価格の下落減少増加
短期金利の下落減少増加
ボラティリティの上昇増加増加
プレミアムの変動要因の一例

今後のS&P500の動きはどうなる?

中期的に言えば米国の金利はほぼ確実に下がることが予想されます。

出典:FedWatchツール
出典:FedWatchツール

現在はS&P500は底堅い動きをしていますが、金利の正常化などの動きによってリセッション(景気後退)が起きる可能性は否定できません。個人的には逆イールド状態の解消に注目しています。

債券利回りとS&P500の関係
債券利回りとS&P500の関係

このような経済の動きから考えると、オプション・プレミアムも減少するのではないかという予想ができます。上でも紹介したプレミアムと分配の推移では、実際に2020以前のプレミアムはかなり少なめであることがわかるので、今後このあたりは懸念点で、タコ足状態になりやすい危険をはらんでいます。

プレミアムと分配の推移
プレミアムと分配の推移

まとめ:XYLDは仕組みを理解して投資しないと危険

現在のXYLDは、高い分配利回りにより予想よりも頑張っている印象があります。しかし、S&P500が下落した場合、株価が回復しにくいため、S&P500本体に投資するよりもリスクが高いと言わざるを得ません。

また、分配の源泉であるオプションに関しても今後の見通しは不透明です。状況によってはタコ足状態になる可能性があることも認識しておきましょう。XYLDに限らず米国ETFの高配当ETFは分配金が減少しているものが増えてきています。分配が安定しているうちはXYLDへの投資を検討してもよさそうですが、投資して放置するのではなく、分配金の減少や株価の減少などを含めた将来の状況に注意を払う必要があるETFと言えそうです。

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この記事を書いた人

◆ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)
大卒から15年以上、東京でシステムエンジニアとして働いたが40歳を前にFPに転身。ライフプランや資産運用に関する無料セミナーや個別相談を通じてお金に不安がある人の悩みを解消中。
得意な分野は資産運用。最近は不動産投資型クラウドファンディングの運用割合を増やし、投資初心者の方にもおすすめの分散投資先として布教中。

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