【米国株】金利上昇時の投資戦略は?為替の影響や有効な投資セクターは?

米国が金利を上げたけど、今後はどうなるんだろう?
米国株への投資はしても大丈夫?

こんにちは、みたお(@mitao_kabu99)です。

2022年3月に米国で政策金利の引き上げが発表されました。
それも影響して、ナスダックやS&P500指数の下げは記録的なものになっています。

米国市場は着実に成長してきているため、ここ数年で米国株への投資は非常に人気が出てきました。
投資初心者の方で米国株へ投資している人の中には「こんなはずではなかったのに」という方もいるかもしれません。

この記事では、このような状況で米国への投資はどうしたらよいのかという疑問を解消します。
あなたが米国への投資を迷っているのであれば是非最後まで読んでみてください。

目次

金利上昇の理由と仕組み

米国ではFRBと呼ばれる機関が政策金利を決めます。
まず、米国で政策金利を上げる仕組みを簡単に説明していきます。

ここでは米国で政策金利を上げる仕組みを簡単に説明していきます。

FRBの役割

FRB(Federal Reserve Board)は「連邦準備制度理事会」と呼ばれる米国の中央銀行のような機関です。

日本でいう日本銀行に近い役割を持っています。

FRBは議長1名、副議長1名を含む計7名の理事で構成されます。
FRBという組織のもとで、実際には各地の連邦準備銀行が中央銀行業務を行う仕組みです。

FRBはFOMCと呼ばれる会合を年8回開催(緊急時には随時開催)して、金融政策(FFレート)を決定します。
FOMCは日本の日銀の金融政策決定会合にあたるものです。

FFレート(フェデラル・ファンド(Federal Funds)レート)は日本でいう、無担保コールレートの翌日物です。

米国のFFレートは下のグラフの通り、2016年頃から引き上げられてきました。
2019年頃から引き下げが始まり、2020年3月に新型コロナウイルスの影響により大きな引き下げが実施されました。

米国のFFレート推移
米国のFFレート推移

景気のサイクルと金利上昇

政策金利を上げたり下げたりする理由は、景気が過熱しすぎたり、冷え込みすぎたりしないようにするためです。

一般的に、好景気になると需要が増えるため、物価が上昇(インフレ)します。
過度なインフレを抑えるために、金利を上昇させて市場に出回るお金を抑制します。

景気回復過熱減速後退
政策金利横ばい引き上げ横ばい引き下げ
市場に出回るお金様子見減らす様子見増やす
景気のサイクルと政策金利の関係

「量的緩和」といった言葉を聞いたことがあると思います。
特に景気後退時には日本でも米国でも政策金利だけでなく、政府が意図的に国債などを購入することで市場に出回るお金を増やします。

日本はここ数年、ゼロ金利政策と量的緩和が続いていますが、アメリカでは量的緩和が解除されつつあり、利上げも実施されました。

日本とは景気のサイクルがかなり違う状況ということがわかります。

テーパリングからQTへ:量的緩和の解除

米国は2020年3月から政策金利の大幅な引き下げと、量的緩和を実施しました。
毎月米国債などを1,200憶ドル買い入れ、市場に出回るお金を増やしていきました。

経済が程度回復してきたことから、2021年11月より購入量を段階的に減らしていく「テーパリング」を開始しました。
テーパリングは資産の購入を減らしていくことで、保有している資産自体は減っていません。

テーパリングのイメージ
テーパリングのイメージ 日経新聞社の記事より抜粋

この増えた残高を減らしていくのがQT(Quantitative Tightening)です。

テーパリング → 利上げ(イマココ) → QT

このように政策をつなげていくことで加熱した景気を抑えようとしています。

2022年5月のFOMC議事要旨では、6月、7月でそれぞれ0.5%の利上げが予想されています。
政策金利は2022年11月に2.5%になり、2023年2月に3.0%で利上げが終了するという予想が大勢を占めています。

FRBは2.5%の政策金利中立金利(緩和的でも、引き締めでもない金利)としていましたので、2022年11月以降は引き締めにむかうことになります。

利上げと円安の影響

2022年3月から5月にかけて、ドルー円の為替相場は1ドル=115円から1ドル=130円まで急激に動きました。
この大きな要因は米国の利上げによって、日米の金利差が開いたからです。

米国の利上げは日本の経済にも大きな影響を及ぼすことがわかります。

今まで円安は株式相場にはプラスに作用すると比較的歓迎されてきました。
しかし、今回の急激な為替の動きの中で、円安は歓迎すべきことだという考えが変わってきているように感じます。

円安にはメリットとデメリットがあります。

円安のメリットとデメリット

おもな円安のメリットとデメリットはこのようなものです。
国民の生活にとっては円安のデメリットのほうが大きいかもしれません。

メリットデメリット
輸出企業は円安の恩恵がある
インバウンド需要が見込める
輸入企業はコスト増になる
海外旅行などがしにくくなる
物価が上昇する可能性がある
円安のメリットとデメリット

輸出企業の恩恵

円安になると輸出企業には恩恵があります。
これはどういうことか簡単に説明します。

輸出企業の円安の恩恵
輸出企業の円安の恩恵

例えば車を輸出していて、アメリカで1万ドルで販売しているとします。
為替レートが1ドル100円の場合、1台の車が販売できると日本円で考えると100万円の売上です。
1ドル=150円と円安になった場合、1万ドルでの販売額は変わりませんが日本円で考えると150万円の売上になります。

これが輸出企業が恩恵をうける理由です。
こうなると、アメリカでの販売価格を下げても利益が出る可能性が出てきますね。
すると、アメリカでの販売数が増えて競争力が高まったり、ブランドイメージが向上する可能性もあります。

もちろん、ここまで単純な話ではありません。
実際には為替予約をしていたり、企業も為替の変動に対してリスクヘッジをしています。

インバウンド需要の取り込み

円安になると、1ドルで交換できる円が多くなります。
これは海外から日本に来る人には大きなメリットです。

インバウンドとはこの通り、外国人が旅行などで日本に訪れることです。
通常円安ではインバウンド需要が見込めるため、特に観光地などでは経済の活性化につながる可能性があります。

現在は新型コロナウイルスの影響で、渡航規制があったりするので必ずしもこの限りではありません。

逆に日本から海外への旅行はしにくくなりますね。

原材料の高騰

輸入企業には円安はデメリットが大きくなります。
原材料などを輸入するコストが上がるからです。

特に2022年はウクライナ問題も影響してガソリン価格が高騰しました。
また、食料品に関しても各企業で値上げがされたり、値上げがなくても容量が減って実質値上げとなる場合もあります。

債券への影響 逆イールドの発生は景気後退のサイン

一般的には金利が上昇すると、債券価格は下落します。

債券の利回り「イールド」といいますが、通常は償還期間までの保有期間が長いほど利回りが高い傾向にあります。
つまり、保有期間を横軸に、利回りを縦軸にすると右上がりのグラフを示します。

ただし、長期金利が上昇すると、長期の債券よりも中期の債券の利回りのほうが高くなる逆イールドのグラフになることがあります。

逆イールドのイメージ
逆イールドのイメージ

逆イールドが発生するのは、中期的には金利が上昇して、長期で見ると景気後退の懸念から利下げがされると投資家が予想するからです。

米国では10年国債の利回りが、2年国債の利回りを下回る逆イールドが発生しています。
過去、米国では逆イールドが発生した時には必ず景気の後退を伴いました。

過去の例と同様になるのであれば、今回も景気の後退が予想されます。
事実、2022年5月にはNYダウは8週連続下落しています。これは約90年ぶりのことだそうです。

当面、米国経済は注視しておく必要があります。

金利上昇局面での投資戦略

それでは、金利上昇局面ではどのような投資戦略が有効なのか解説していきます。

金利上昇局面で有効なセクター

米国のセクターについてはこちらの記事で紹介しています。

金融セクター

金利上昇局面では金融セクターは有効な投資先だと言われています。
貸出金利の利ザヤが大きくなりますし、好景気であれば銀行の貸し出しも増えます。

金融セクターに投資できるETFはVHF(バンガード 米国金融セクター ETF)などです。
ただし、今回の利上げに関しては市場が敏感に影響しており、軟調な動きをしています。

必ず上昇するというわけではないところは注意が必要です。

下の図はVHFとVOO(S&P500)の比較ですが、この半年ではほとんど同様の動きをしています。

VHFとVOOの比較

エネルギーセクター

エネルギーセクターもインフレ時に強いセクターだと言われています。
さらに今回のウクライナ問題ではロシアのエネルギー供給の問題もあり、エネルギー関連は有望かもしれません。

エネルギーセクターに投資できるETFはVDE(バンガード 米国エネルギーセクター ETF)などです。
下の図を見ると青のVDEはVOOを大きく上回っています。

今後このまま上昇し続けるかの保証はありませんが、当面有効な投資先といえます。

VDEとVOOの比較

ヘルスケアセクター

ヘルスケアは不況に強いディフェンシブ銘柄です。
ディフェンシブ銘柄でありながら、最先端の技術も投入されるセクターであり、成長性も期待できます。

ヘルスケアセクターに投資できるETFはVHT(バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF)などです。
下の図を見てわかるように、特に利上げをした後から青のVDHはVOOを上回っています。

個人的には、好景気、不景気どちらにも利用できるセクターだと感じています。

VDHとVOOの比較

長期投資の有効性

米国株に長期投資をすることは、金利上昇局面でも有効な投資方法です。

金利上昇に伴い、景気が後退していくと株価も軟調になるかもしれません。
しかし、ドルコスト平均法の考えで投資をすすめることで、株価の下落局面で保有口数を増やすことができます。

まとめ:金利上昇局面でも米国株への投資はやめなくてよい

ここまで読んでいただきありがとうございました。

長期金利が上昇して、米国市場の株価は軟調な動きをしています。
今年は強気に投資をするのは少し危険かもしれませんが、米国株への投資をやめる必要はないと考えます。

株価が下がった時は、逆にキャピタルゲインを狙うことができるタイミングでもあります。
景気後退局面に強い銘柄や、長期で投資することで米国株の成長をうまく生かしていきましょう。

ありがとうございました。

投資をするときには勉強は必須です。
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この記事を書いた人

◆ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)
大卒から15年以上、東京でシステムエンジニアとして働いたが40歳を前にFPに転身。ライフプランや資産運用に関する無料セミナーや個別相談を通じてお金に不安がある人の悩みを解消中。
得意な分野は資産運用。最近は不動産投資型クラウドファンディングの運用割合を増やし、投資初心者の方にもおすすめの分散投資先として布教中。

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