WACC(加重平均資本コスト)とは?:資金調達のコスト

WACCは借りた資金と株主から集めた調達コストの加重平均です。
計算対象のお金は投下資本となるので、ROICと比較できます。

この記事ではWACC(weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト、ワック)について説明します。

WACCは聞いたことがない方もいるかもしれませんが、考え方は難しいものではありません。

調達した資金に対しての債権者と株主が期待するリターンです。
調達した資金(投下資本)が計算対象になるため、ROICと比較することができ、ROICがWACCを上回る必要があります。

ROICについてはこちらの記事で紹介しています。

資本コストの考え方は重要で、EVA(経済的付加価値)の計算にもWACCを使用します。

目次

WACC:加重平均資本コストとは

加重平均資本コストと書くと難しく感じますが、考え方は簡単です。

企業がお金を調達してくるには主に2種類の方法があります。
1つは銀行からの借入や社債など返さなくてはいけないお金です。
もう1つは株式を発行した資金などで調達される株主資本です。

まず、この2種類があることを理解してください。

WACCの対象
WACCの対象

このお金は調達のコストがかかる(後ほど説明します)ため、平均すると何%の利率なのか?
というのがWACCの考え方です。

有利子負債のコスト

それぞれ確認していきます。まず、有利子負債のコストです。
これは銀行からの借入金をイメージしていただければよいのでわかりやすいと思います。

有利子負債で期待するリターン=借入にかかるコストは金利です。
有利子負債の資金コストは金利となるのですが、実際には金利を支払った分の利益が減るため、節税効果があります。
したがって、金利から節税分を差し引いた金額が正確な資金コストとなります。

金利 × (1 ー 税率)

計算するとどういうことかがわかります。
例)100万円を借入 金利は5% 税率は40%、営業利益は1000万円だったとします。
・金利は5%のため、5万の支払利息が発生します。
・営業利益から計上利益を計算する際に5万円が引かれる為、税金計算対象が5万円減ります。
・つまり1000万円に40%ではなく、995万円に40%の税率をかけることになります。
 したがって、5万円×0.4(40%)=2万円分の節税効果があります。
・正確なコストは100×0.05(金利5%)ー100×0.05×0.4(税率40%)【節税効果分】=3万円
 よって 100×0.05(1-0.4)=3万円
 前提の100万円はいくらでも関係ないので、金利×(1-税率)となります。
 5% × (1-0.4)= 5% × 0.6 = 3%
 金利が5%で税率が40%の場合、実質の資本コストは3%となります。

株主からの資本コスト

次は株主から調達した資金の資本コストです。
こちらは少し考え方が難しいです。

まず、株主から調達した資金のコストとは何でしょうか?
直接的にお金が出ていくのは配当のようにも思いますが、上でも書いた通り、株主はリターンを期待しており、株主が期待している利益を生み出すことがコストになります。

株主が期待している当期純利益のレベルを推定する方法で、WACCの計算によく使用されるのが、CAPM(Capital Asset Pricing Model:資本資産価格モデル、キャップエム)です。

少し難しいので、そこまで深く知らなくていいという人はさらっと読んでください。

CAPMは以下の式で表します。

Rf + β(Rm ー Rf)

Rf:リスクフリーレート
Rm:株式市場での長期間での年平均投資リターン
β:各企業のリスクの大きさを示す数値

これだと何をいってるのかよくわからないと思います。

まずRfはリスクフリーレートと呼ばれるものです。
これは、「リスクフリー」つまりリスクがなく、ほぼ確実に期待できる金利を指します。
国債の10年物の金利がよく使われます。

厳密にはリスクがないわけではありませんが、極めてリスクが低いからです

次にRmは株式市場での長期間での平均リターンです。
(Rm ー Rf)は、マーケットリスクプレミアムと呼ばれるもので、市場全体の株式投資のリターンが国債の長期金利をどれだけ上回るかを期待している数値です。
おおよそ6~7%程度といったところです。

β(Rm ー Rf)はリスクプレミアムと呼ばれています。
上記のマーケットリスクプレミアムにβ値を掛け算することで、各企業ごとの期待値を計算します。
βは市場全体の動きと全く同じ動きをすると1、ブレが大きくなるほど1より大きくなります。
逆に市場のブレより小さくなると1より小さくなります。

例)10年物国債金利:0.2% RmーRf(マーケットリスクプレミアム):6% β:1.1
0.2 + 6 × 1.1 = 6.8

つまり、資本コストは6.8%で株主はそのリターンを期待していることになります。

いろいろ書きましたが、ごちゃごちゃして難しい人はそこまで考えなくてもよいです。
国債の利回りとマーケットリスクプレミアムは一定値と決めてしまってもよいとおもいます。

マーケットリスクプレミアムは時々見直しましょう。

そうすると問題はβ値だけですが、私はバフェット・コードさんの値を使ってしまいます。

ソニーグループのβ値
バフェットコードHPよりソニーグループのβ値

2つのコストからWACCを計算する

初めの図に戻って、2つのコストの加重平均を求めます。

この2つのコストをそれぞれ計算しましたが、投下する資本(有利子負債と株主資本)は同じ金額ではありません。

そのため、単純に足して÷2をすればよいわけでなく、それぞれの資金の大きさの比重に応じて算出します。

例)有利子負債:1億円(資本コスト:3%) 株主資本:5億円(資本コスト:6.8%)
(1億円÷(1億円+5億円))× 3% +(5億円 ÷(1億円+5億円))× 6.8% ≒ 6.17%

つまり、投下資本に対して6.17%のリターンを期待しているわけなので、ROICは最低でもそれは上回らないと株主と債権者(銀行など)の期待に応えていないことになります。

基本的に有利子負債の資本コストのほうが低くなるため、有利子負債が存在することは悪いことではありません。

まとめ

WACCについて説明いました。

現在ROEが一般的になってきたように、今後資本コストの考え方を使用した数値が一般的になってくるものと思われます。

会社は一定の売上を上げ続ければよいというわけではなく、少なくとも投下した資本に対して期待するリターンを出さないといけないということがわかります。

ありがとうございました。

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この記事を書いた人

◆ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)
大卒から15年以上、東京でシステムエンジニアとして働いたが40歳を前にFPに転身。ライフプランや資産運用に関する無料セミナーや個別相談を通じてお金に不安がある人の悩みを解消中。
得意な分野は資産運用。最近は不動産投資型クラウドファンディングの運用割合を増やし、投資初心者の方にもおすすめの分散投資先として布教中。

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