こんにちは、みたお(@mitao_kabu99)です。
米国の消費者価指数(CPI)やインフレのニュースやこれからどうなるかの考察は頻繁に報道されたり、紹介されています。ただ、一口に物価の上昇やサービスのインフレといっても言っていることが同じものを指しているかわかりません。
正直、自分もこれは何を言ってるんだろうと疑問になることがあるので、勉強もかねてCPIと呼ばれるものがなにで構成されているのか調べてみました。基本的に米国労働統計局のデータとFREDのデータを利用して説明します。

CPIの全体をまとめるとこんな感じです。

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CPIに関するよくある質問
まずは、よくある質問にざっくり回答します。詳細はこの記事内で解説していきます。
米国CPIの今後の予想
下のグラフは「CPI(青)」「コアCPI(赤)」「サービス(緑)」の直近1年間の推移です。全体としてはすべて下落基調なので、今後も下落が続くと考えられそうです。青>赤>緑になるにつれて下げのタイミングが遅く、下げ幅も小さいものになっていますが、一般的に住宅やサービスは政策金利上昇の効果が出るのが遅いといわれているためです。

そもそもアメリカのCPI(消費者物価指数)とは?
CPI(Consumer Price Index)は物価がどのように変化しているかを指数化したもので、米国労働省(労働統計局)が発表しています。変化の大きい食品やエネルギーを除いたコアCPIもインフレを測る指標として重要視されています。
同じくインフレを測る指標として利用されるPCEデフレーターよりも早く発表されるため、注目度が高いです。ただし、FRBはCPIよりもPCEを重視しているといわれています。
米国CPIはいつ発表される?
米労働省労働統計局(BLS)から毎月15日前後に発表されます。
米国CPIの主要構成は「食品」「エネルギー」「それ以外(コアCPI)」
まず、米国労働統計局の消費者物価指数とFREDのどのデータがリンクするのかをはっきりさせます。
米国労働統計局がCPIとして発表している数値がこれです。まず下のデータの表1.をチェックします(下の図は日本語翻訳しています)

米国労働統計局「消費者物価指数の概要」 ※上の画像は最下部の部分です。
CPIの構成要素全体の組み合わせを確認

表1の中にあるCPIのデータでALL itemsの値が「300.840」となっています。このデータは季節調整前なのには注意してください。
次にFREDのデータをチェックします。全体のCPIは以下の名称か右側のコードみたいなもので検索すると出てきます。季節調整有り無しのどちらもあるので「なし」のほうで確認します。
項目 | 名称 | 季節調整済み | 季節調整なし |
---|---|---|---|
CPI全体 | Consumer Price Index for All Urban Consumers: All Items in U.S. City Average | CPIAUCSL | CPIAUCNS |
Feb 2023の値が300.840となっているので、この組み合わせは間違っていないと考えられます。

アメリカのCPIの構成要素と構成比率
再度上の表でCPIの構成要素と構成比率をチェックします。まず大きな分類として、「食品」「エネルギー」「食品とエネルギー以外」の3つに分けられます。

構成比率的には、コア部分が79.403%で最も大きく、次いで食品(13.521%)、エネルギー(7.076%)となっています。エネルギーは話題になることも多いですが、全体の構成比率としては10%の以下となっています。
構成要素 | 構成比率 | 2023年2月 |
---|---|---|
ALL items | 100 | 300.840 |
食品 | 13.521 | 320.569 |
エネルギー | 7.076 | 281.673 |
上記以外 | 79.403 | 304.011 |

ちなみにFREDのデータとしては以下のデータがリンクしています。季節調整なしのほうを使えば上の2023年2月のデータと一致しています。
項目 | 名称 | 季節調整済み | 季節調整なし |
---|---|---|---|
食品 | Consumer Price Index for All Urban Consumers: Food in U.S. City Average | CPIUFDSL | CPIUFDNS |
エネルギー | Consumer Price Index for All Urban Consumers: Energy in U.S. City Average | CPIENGSL | CPIENGNS |
それ以外 (コアCPI) | Consumer Price Index for All Urban Consumers: All Items Less Food and Energy in U.S. City Average | CPILFESL | CPILFENS |
コアCPIとコアコアCPIは何が違うのか(コラム的な話)
コアコアCPIという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは日本のCPIの項目の話となります。
項目 | 米国 | 日本 |
---|---|---|
コアCPI | 生鮮食品及びエネルギー除く | 生鮮食品除く |
コアコアCPI | ー | 生鮮食品及びエネルギー除く |
日本の場合、生鮮食品を除いたものをコアCPIとよび、そこからエネルギーを除いたものをコアコアCPIとよびます。米国ではコアCPIがエネルギーものぞいたものであるため、米国のコアCPI=日本のコアコアCPIのイメージとなります。
米国コアCPIのインフレはサービスのインフレなのか?
次に最も比率の多い「食品とエネルギー以外」の部分(79.403%)を見てみます。コアCPIを大きく分けると「財」と「サービス」に分けられます。(財(21.325%)+サービス(58.078%)=79.403%)
ただしサービスの中でエネルギーサービスは除かれています。これはエネルギーサービスが上で説明した「エネルギー」の中に含まれているからです。サービスの中では、「シェルター」「医療」「輸送」などでいくつか分かれいます。

コアCPIの中で「財」と呼ばれている部分は上の表にある通り、衣服や車といったものなので、サービスとは直接関係ないものといえます。いわゆるサービスのインフレと言われているものをいうならコアCPIをチェックするのは少し違うと考えています。
サービスのインフレ指標
上の表でサービス(サービスレスエネルギーサービス)は、FREDで検索するときは以下の指標を使います。2023年2月の指標は「390.070」でした
項目 | 名称 | 季節調整済み | 季節調整なし |
---|---|---|---|
サービス (財以外のコアCPI) | Consumer Price Index for All Urban Consumers: Services Less Energy Services in U.S. City Average | CUSR0000SASLE | CUUR0000SASLE |
直近1年間の前年比でみるといまだに上昇していることがわかります。

ちなみに、このサービスとコアCPIを重ねると、下のようになっています。仮に何も知らずにコアCPIをサービスのインフレが下落していると言われたらそう信じてしまうと思います。

粘着性CPI(Sticky Price Consumer Price Index)
サービスのインフレと似たような概念で粘着性CPI(Sticky Price CPI)というものもあります。アトランタ連銀が毎月発表している指標で価格が下がりにくいものを集めた消費者物価指数です。FREDでは以下の項目を利用します。
項目 | 名称 | 季節調整済み |
---|---|---|
粘着性CPI(食料とエネルギー除く) | Sticky Price Consumer Price Index less Food and Energy | CUSR0000SASLE |
粘着性CPI(食料とエネルギーとシェルター除く) | Sticky Price Consumer Price Index less Food, Energy, and Shelter | CRESTKCPIXSLTRM159SFRBATL |
粘着性CPIは調べてもよくわからなかったのですが、クリーブランド連銀のサイトによれば、価格変動が4.3カ月よりも少ない頻度で発生するものを「Sticky Price」の財とみているようです。
If price changes for a particular CPI component occur less often, on average, than every 4.3 months, we called that component a “sticky-price” good.
クリーブランド連銀のサイト
こちらはサービスだけということではなく、品物なども含まれるようです。以下のようなものが価格変動が少ないものとして挙げられていました。日本語約はもしかしたら違うかもしれません。頻度はおそらく月を示しているんだと思います。きちんと読み取れていないので詳しく知りたい方は上のサイトを見てください。
項目 | 日本語 | 価格変動の頻度 |
---|---|---|
Motor vehicle insurance | 自動車保険 | 5.9 |
Medical care commodities | 医療用品 | 6.2 |
Recreation | レクレーション | 7.9 |
Public transportation | 公共交通機関 | 9.4 |
Food away from home | 外食 | 10.7 |
Rent of primary residenceb | 家賃 | 11.0 |
Medical care services | 医療サービス | 14.3 |
粘着性CPIは最近見ることがありますが、帰属家賃の話だけではないと思ったほうが良さそうです。
CPIの構成比率を理解しておかないと勘違いする
米国のCPIやインフレのニュース・考察を見る時には、何について話しているのかをきちんと理解しておかないと、それが本当に正しいかどうかわからないときもあります。
インフレ率に関して検討するときは構成比率も考えておきましょう。
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